第29話:できる人材を抜く

カイゼンを進めていくと、いままで残業が当たり前だったのが定時で終るようになり、さらにカイゼンが進んで定時の1時間前に終わるように、だんだん少ない時間でできるようになってきます。

しかし、これではまだカイゼンは経営に生かされていません。

 

この職場が4人で仕事をしているのであれば、職場全体では1時間×4人で4時間分の時間が浮いたのでこれの時間を活用しなければなりません。

他の残業の多い職場の仕事を引き受けたり、外注に出している仕事を取り込むなど、浮いた時間を有効活用できて初めて経営に効いてきます。

 

もう一つの手段は、定時の1時間前に終わっていた仕事をさらにカイゼンを進めて2時間前に終わるようにさらに生産性を上げます。すると2時間×4人で8時間分の時間が浮きます。

 

そうなれば、いままで4人でやってきた仕事を3人でできる計算になり、その部門から1人抜くことができます。抜かれた人は他の部門で新たな仕事をすればいいわけです。

 

さて、もしそうなったらその部門から誰を抜くかです。

 

一番仕事ができる人か?一番仕事ができない人か?それとも他の人か?

 

一番仕事をできない人を抜けば、その職場は今まで通り問題なく仕事は続きます。

 

一方、一番仕事ができる人を抜くとどうなるでしょうか?

 

どこの職場にも、できる人はいます。

 

日々の仕事がうまくいくために、PDCAをきっちり回して、なにか問題があれば関連部署と調整をして対応していく、できる人はいます。

 

そんな人を抜いてしまえば、現場はてんてこ舞いになるでしょう。関連部門やお客様からクレームが来るかもしれません。

 

上に立つものとしてはついつい一番仕事ができる人以外の人を抜いてしまいがちですが、果たしてそれでいいでしょうか?

 

一番できる人材を一つの部門に止めておくと、その人の新たなる発展のみならず、その人が上にいるがために、これから伸びるべき人が育たないというリスクになります。

 

「この人がいなければ仕事が回らない」とよく言われますが、退職や異動などで抜けてしばらくはてんてこ舞いですが、しばらくすれば何事もなくうまく回り出します。

 

上がいなくなれば、下にいた人材はしっかり育つのです。

 

頼りにされて一つの部門に塩漬けになって人も、さらなる発展の可能性の芽が摘まれていたのが新たな環境でさらに伸びるチャンスがでてきます。

 

カイゼンを進めていくと、自分たちだけでのカイゼンではパワーが足りなく、部門共通のカイゼンの支援チームも必要になってきます。一番できる人はその職場でカイゼンに積極的に取り組んできたのであれば、他の職場のカイゼンの支援に回り、会社全体のカイゼンを活性化することもできます。

 

また、これまで外部に出していた仕事を社内に取り込むときはいろいろと解決しなければならない課題も多々でてきます。一番できる人はそういったところでさらに自分の力を発揮してもらうことです。

 

できる人材を抜くことが、会社としても、社長としても、一番できる人としても、その人以外の人としても、一番の選択肢です。

 

あと、カイゼンも部分的なカイゼンでなく、しくみのカイゼンをしておけば、一番できる人が抜けても、大きな混乱なく回ります。

 

もし、ものづくりのしくみをカイゼンで作り直し生産性が上がったとき、ある部門で一人抜けるときは迷わず一番できる人材を抜いてください。