第30話:設備投資をする前に検討すること

「生産能力がないのでもう一台購入したいのですが・・・・」

 

売上が増えれば、工場はそれに応えなければなりません

 

生産に余力があればいいですが、もしなければ

・残業や休日出勤で対処する

・能力をアップさせる

・外注に出す

といった手を打たなければなりません。

 

継続的に能力が足りないことが見込まれれば、残業や休日出勤でなく能力アップを検討することになります。

 

能力の中でも設備がネックになっているとなると、設備投資です。

 

「じゃあ、もう一台買うか」

 

と十分に検討しないで、設備投資していませんか?

 

 

設備投資にかかった金額は、減価償却と言うかたちで数年に渡り分散して費用計上されます

 

1,200万円の投資で、仮に10年で償却するとなると、毎年120万円の費用が発生します。(月当たりで10万円)

 

この費用は個々の製造コストに割り当てられます。

 

その設備を使って作ったものが多ければ多いほど、計算上の1個当たりの原価は小さくなります。

 

購入した設備の1ヶ月の最大生産能力が1万個であれば、1個あたり10円の原価になります。(10万円 ÷ 1万 = 10円/個)

 

しかし、注文をこなすのに5千個で十分でそれだけしか作らなければ、1個あたり20円の原価になります。(10万円 ÷ 5千 = 20円/個)

 

そうなるとよく工場で見かけるのが、「今月は5千個で十分だけど来月も注文が来るから1万個作って残りは在庫しておこう」という判断です。

 

翌月1万5千個の注文が来ればいいですが、翌月も5千個の注文しかなければ、また5千個余分につくってしまい、トータル1万個の在庫が倉庫へ・・・・やがて倉庫には数万個が在庫として積まれている、そんな工場を見かけます。

 

設備投資をしたら、見かけ上の製造コストを下げるために今売れていないのに、せっせとつくるのが本当にいいかどうか、キャッシュフローの観点から考えれば歴然としていますが、原価計算に惑わされてしまうのです。

 

売れた分だけつくり、余分なものは作らないのが本当はいいのです。

 

たとえ原価が安くなっても要らないどんどん在庫が溜まって、最後に廃棄なんてことになったら、1個あたりの原価が高くなる以上のムダなコストが発生し、場合によっては大きな赤字を出してしまいます。わたしが居た大手製造メーカーも売上高の10%に及ぶ赤字を出しましたが、その主な要因は不要に作った在庫でした。

 

 

もちろん本当に必要な設備投資はいいですが、本当に必要なのか事前に十分検討できていない工場もあります。

 

現場からは能力が足りないと言っていても、実際現場に行って調査すると稼働率が6割程度のこともあります。そんなときは稼働率を7割、8割とさらにアップさせるようにカイゼンすればいいのです。

 

 

現場が同じものを連続してつくりたいがために、急ぎの仕事のためにもう一台設備を要求していた工場もありました。

 

同じものを連続してつくりたがるのは、段取替え時間が長いのでそれを理由にしているだけです。まずは段取り替え時間の短縮を図って、1日に複数種類ものをつくることができるようにカイゼンすればいいのです。

 

 

また、新たに設備を購入するときは、最新の高性能の設備が必要なのか、検討が必要です。ひょっとしたら一世代前、二世代前の設備でもいいかもしれません。もしそうであれば、中古の設備を購入すれば減価償却費も安くなります。

 

現場から能力が足りないと言われたら、本当に必要か、もっと安くすまないか、十分に検討することが大切です。