第75話:忙しい工場と忙しくしている工場

「ワカイさん、売上が落ちてもみんな、うちの工場の連中はいそがしい、いそがしいっていうんですけど、いったいどうなっているんでしょう」

 

売上が伸びている工場は、もちろん現場はいそがしいですが、意外に売上が落ちていている工場の現場もいそがしくしています。

 

そんな売上が落ちてもいそがしい工場が、売上が回復するとどうなるか?

 

残業、休出、そしてそれでも間に合わないと外注に仕事を出す。

 

売上が増える半面、いつも以上に外にお金が流れてしまい、意外に儲かっていません。

 

では、売上が落ちてもいそがしい工場は元々、設備が足りない、人手が足りない、といった生産能力が足りないのでしょうか?

 

たしかに元々生産能力が足りない工場もありますが、大半は十分足りています。

 

では、なぜいそがしいのでしょうか?

 

 

実は、次のような理由で売上が落ちていても、いそがしくしているのです。

 

・ 売上が落ちて作るものが少なくなれば、本来現場は仕事が無くなるが、何もしないのを嫌がり今つくらなくてもいいものをつくってしまう。

 

なぜなら、仕事をしないと工場の評価指標である生産性は下がる、稼働率が下がるので、今作らなくてもいいものを作ってしまうのです。

 

・ 今作らなくてもいいものを作ってしまい、工場現場の仕掛り在庫が増え、ものであふれかえり、その結果、

 

探す、取り出す、運ぶ、戻す

 

といった価値のない仕事が大幅に増えてしまう。

 

工場で価値がある仕事は、材料を加工して部品をつくる、部品を組み立てるといった仕事です。

材料や部品を探したり、取り出したり、運ぶ、戻すといった仕事には何の価値もありません。

いわばムダな作業が溢れかえっているのです。

 

いま作らなくてもいいムダなものをつくって忙しくなり、ムダなものをつくることでムダな作業が増え、増々いそがしくしているのです。

 

社長の工場はそんなムダで溢れていませんか?

 

そんなムダは一つひとつ排除すべきですが、その際一つ大事なことがあります。

 

今作るべきものだけ作り、ムダな作業が減ってくれば、現場の作業者に仕事が無くなります。

 

そんな仕事をしていない作業者が、サボっているという感覚を持たせないことです。

 

そんなときは、仕事のない作業者が別のいそがしい職場を応援できるようにカイゼンする。

 

または営業が、社長が外から仕事を取ってくることです。

 

社長の会社は、いそがしい工場ですか?

 

いそがしくしている工場ですか?