第99話:人視点のカイゼンともの視点のカイゼン

「若井さん、みんな頑張っているんですけど、なかなか利益につながらないんです」

 

ひとり一人がベストを尽くせば、全体としてもベストになるでしょうか?

 

多くの工場では人視点のカイゼンに偏っている気がします。コスト削減のため工場の生産性を上げる。そのために

 

ひとり一人がベストを尽くし

 

各部門もベストを尽くす

 

そうすれば自ずと会社の利益につながればいいのですが、なかなかそうもいきません。

 

ひとり一人がベストを尽くしているか? 各部門がベストを尽くしているか? を計る指標に生産性があります。式で表せば

 

生産量/投入工数

 

になります。

 

ここで問題なのが生産量です。

 

いったい何を生産しているかです。

 

一定の工数でより多くの生産を達成したとしても、果たして必要なものをつくっているかです。

 

そういう質問をすると「必要ないものは作っていない」という答えが返ってきます。

 

では、「今、必要なものをつくっているか?」ではどうでしょう?

 

すると「今、必要ではないものも作っているがいずれ必要になる」という答えが返ってきます。

 

「では、いずれっていつですか?」

 

・・・・

 

今必要なのは1個だけど、生産性を考えて10個作っている。残り9個は今月中には売れるはずだ。

 

こんな調子で、まとめてつくることで個人や部門のベストを追い求めている工場があります。

 

ひとり一人がベストを尽くす人視点のカイゼンに注力するばかりに、結果的に今必要のないものもつくってしまっています。

 

今、必要のないものを作ったり、買ったりした「もの」はいったいどうなっているでしょうか?

 

部品倉庫に置かれている

 

生産現場に置かれている

 

製品倉庫に置かれている

 

こんな調子で工場の至る所にものが置かれています。ちょっとの間置かれているだけならいいのですが、数週間、数ヵ月、数年間放置されているものも結構あるはずです。

 

これらの「もの」は売上が経つまで一時的にお金が「もの」に化けているだけです

 

お金が「もの」に化けて長期間放置されている状態を良しとする経営者はいません。

 

ひとり一人がベストを尽くす人視点のカイゼンは重要ですが、利益につなげるためにはそれ以上に「もの」がいち早く売上を通じてお金になるような、もの視点のカイゼンが重要です。

 

社長の工場は、個人や部門がベスト一方で、「もの」がお金になることを阻んでいませんか?