第15話:売上が増えたときこそコスト削減に努めよう

売上が増えた!

 

となると、不景気のときに一生懸命取り組んだコスト削減は知らないうちにどこかにいってしまいがちです。

売上が増えると量産効果でコストが下がると言う人もいますが、果たして本当でしょうか?

売上が増えた会社のその後を追うと、なかには知らないうちにコストが増えてしまったというところもあります。

 

いったいどういうことでしょう。

 

コストは変動費と固定費に分かれます

たとえば、材料費は変動費です。売上が増えればそれに応じて材料や部品を購入しなければなりません。

一方、従業員の給与は固定費です。一旦従業員を雇えば定年まで固定的に人件費は発生します(最近はそうとも言えませんが)。

よって、売上が増えても製品1個当たりの変動費は変わりません。

しかし、固定費はその全体の費用は売上の増減によっては変わりませんが、製品1個当たりの費用は売上が増えれば増えるほど安くなります。

つまり、売上が増えることにより量産効果が発揮されるのは製品一個当たりの固定費です。

 

しかし、注意しなければならないのは次のような誘惑です。

 

今まで毎月1,000個買っていたある部品が売上増で毎月2,000個必要になったとき、海外から調達すれば購入ロットは10,000個と大きくなるけど単価が2割安くなる。

10,000個まとめて購入しても5か月で使い切れるからと海外から調達してしまう。

売上が増えてスタッフ部門の人間が足りなくなったので、新たに人を採用する。

 

しかし数か月後、2倍に増えた売上が急に元の売上に戻ったり、元の売上を下回ったらどうなるでしょう?

海外に注文したときは毎月2,000個の売上が、材料が納品されたときには元の1,000個の売上に戻っていたらどうなるか。

 

毎月の売上が2,000個のときの10,000万個の在庫は5か月分ですが、売上が1,000個に戻ってしまったら、いきなり10か月の在庫になってしまいます。もし半年後にモデルチェンジを予定していて使用する材料が変わってしまうと、4,000個以上の材料在庫はムダになってしまいます。

 

■海外からまとめて10,000個分の材料をまとめて仕入れたとき

製品の材料費

1,000×0.8×6=4,800(国内より1,200安くすむ)

廃棄コスト

1,000×0.8×4=3,200

トータルコスト

4,800+3,200=8,000

■国内から毎月必要な分だけ材料を仕入れたとき

1,000×6=6,000

 

売れた製品に使った材料は1,200安かったが、残った材料が3,200ムダになり、差し引き2,000余分にコストが発生してしまいます。

おまけに増強したスタッフは仕事が減ったからといって解雇はできず、製品1個あたりの固定費は結果的に以前より増えてしまいます。

 

売上が増えたときこそ、ムダなコストが発生しないように、また今の能力で売上増加分を吸収できるようにカイゼンをする、つまりコスト削減をするのです。

普通は売上が下がると、経費削減、コスト削減と躍起になりますが、それでは遅いのです。売上が伸びて儲かっているときにこそコスト削減に取り組むべきなのです。