第22話:ゼロベースで見る

弊社のセミナーでは、カイゼンをする前に必ず現地現物で実態を正しく把握することをお薦めしています。すると、セミナーが終わって個別にお話ししていると

「まずは自社の工場の実態を把握してみます。それだったらすぐにでもやれそうなので、まずはやってみますわ」

と意気揚々と帰られていくのですが、そのとき一点意識して欲しいことがあります。

 

ゼロベースで現場を見てみる、ということです。

 

ゼロベースを辞書で調べてみると

 

ゼロベース :物事を始める際に、白紙の状態にすること。特に予算編成時の各支出項目に関して、新規の増分だけでなく、過去の実績についても白紙の状態から検討すること。

 

と何かをつくり出すときに、一旦すべてを白紙の状態にしてから検討したり、つくり出したりするということです。

 

わたしはそれ以外に、実態を正しく把握するときもゼロベースの考えが必要だと考えます。

 

わたしたちは現状を調べるとき、予め知っているハズのものは現地で現物を見ても、先入観で見てしまい、見ているようで見ていないことが結構あると思います。そんな状態でいくら現地現物と言っても誤った実態把握をしてしまいます。

 

たとえば、現場ではどのような指示で仕事が行われているか実態を把握しようとしたとき、

 

まずは現場に行って、コンピューターから出力された帳票を探します。自社の工場は数年前から稼働しているコンピューターあり、そのコンピューターシステムからは毎日作業指示書を出力されているのを知っているからです。帳票を見つけると、それがどのようなタイミングで現場に届けられて、それをどのように活用しているか、その使い勝手はなどとヒアリングしていくことでしょう。

 

一見よさそうですが、果たしてそうでしょうか?

 

ひょっとすると実は現場で作業をしている人からすると、数年前に本番稼働したコンピューターシステムから出力される帳票は、現状業務が変わって使いにくかったり、数年前とは前提条件が変わり使えなかったりで、すでに使用していないかもしれません。

 

現場では情報システム部門から直接データをもらい、エクセルなどを使って各担当が自分たちの使いやすい帳票を作って、運用しているかもしれません。

 

現場ではコンピューターシステムから出力されている帳票をほとんど使っていなくても、質問の中心がその帳票であれば、自分たちで他に帳票をつくって実は運用しているんですよ、なんてわざわざ言わないかもしれません。

 

既存の帳票ありきではなく、現場の作業者に日々どんな情報を使って仕事をしているか、ゼロベースで調べないと本当の実態は見えてきません。

 

こんな感じで、ゼロベースで調べ始めると、1、2日で調べられると思ったことが数日または数週間も掛かってしまうこともあります。

 

ただ、メーカーや流通業のいいところは、現場にあるものはウソを付けませんので、現場に何が何個あるか?から始まって、現地現物でものを中心に調べていけば必ず正しい実態を把握できます。

 

みなさんも実態把握をするときは先入観が入らないように、ゼロベースから見る癖をつけてください。