第3話:しくみのKPI

「体重80kg、脂肪率25%、腹囲87cm、コレステロール値も高いです。明日からさっそく薬を飲んでください」

 

3年前、医師から言われました。

 

心筋梗塞や脳梗塞などの成人病にならないために、脂肪をため込んでいないか健康診断でチェックします。

 

脂肪は必要以上にため込むと動脈硬化を引き起こし、成人病の可能性が高くなるからです。

 

過剰に脂肪をため込んでいるか否かを調べることは、わたしたちが健康的な生活を過ごしているかチェックする指標です。

 

では工場や会社のしくみがうまく機能しているかどうか、健康状態を検査するには何を見たらいいでしょうか?

 

それは、会社の脂肪である 在庫 です。

 

人間にとって脂肪は、寒さから身を守り、外部の衝撃から臓器を守ります。また、飢餓の際には重要な栄養源となります。人間は脂肪が無くては生きていけません。

 

しかし、その一方で脂肪は成人病のリスクを高めます。

 

人間にとって脂肪はなくてはならないけど、多すぎても駄目なのです。

 

在庫も同じです。

 

在庫があればお客様の要求にすぐに対応できます。

 

商品を買いにお店に出かけて、すぐ手に入るのと、注文をして2か月後に手に入るのでどちらがいいですか?

 

もちろん前者、すぐに入手できることです。

 

また、在庫は万が一のリスク回避や工場の負荷平準化にも有効に活用されます。

 

しかし、その一方で必要以上の在庫はコストを増加させてしまいます。

 

ある工場の倉庫にうずたかく積まれた製品は販売当初は引く手あまた。まさに金のなる木でした。

 

しかし、月日が経つと売れ行きは落ち、数ヶ月後売れ残った製品は・・・・

 

売れ残った製品は生鮮食料品ではありませんが賞味期限があります。日進月歩で技術革新の進む業界の製品であり、数年前はもちろんのこと、1年前の製品はもう売り物になりません。

 

その結果・・・・

 

最後は捨てるしかありません。お金を払って材料を仕入れ、人件費や経費を払ってつくった製品が捨てるしかない。使ったお金が回収できないのです。捨てるにも産業廃棄物としてお金がかかります。過剰に在庫を持ったためにお金をドブに捨てることになってしまうのです。無駄になったコストは、売れた製品で元を取るしかありません。見方によっては廃棄コストが売れた製品のコストに上乗せされるようなものです。

 

このように在庫を過剰に持つと、脂肪を過剰に蓄えるのと同じく、悪影響を引き起こしてしまうのです。

 

脂肪も在庫も適正な量に維持しなければなりません。

 

会社の在庫も定期的にチェックして多すぎたり、少なすぎたりしたら、すぐに手を打たなければなりません。

 

脂肪や在庫のように企業目標を実現するために日々の活動の成果をモニタリングする指標をKPI(Key Performance Indicator)といいます。お父さんは体重や脂肪率を、会社は在庫を、KPIに改善に励むのです。

 

みなさんの会社の在庫は適正でしょうか?