第4話:しくみカイゼンの第一歩は現地現物から
前回、会社のしくみのKPIは在庫、という話をしました。
(KPI:Key Performance Indicator 利益など会社目標を実現するために日々の活動の成果をモニタリングする指標)
もし過剰な在庫が発覚したら在庫を減らさなければなりません。
では、どうやって減らすか?
健康診断で太り過ぎを指摘され、とくに脂肪を減らせと言われたらどうしますか。
ついついやってしまう、食事制限や偏ったダイエットでは脂肪が減らずに筋肉が減ってしまい痩せにくい体質になってしまうこともあります。
無理して減らせても長続きせずに、リバウンドで逆効果なんてこともあります。
医師から言われるのは、毎日の食事の内容を変えて、定期的に運動をすること、つまり我々の生活習慣を変えることです。
会社も同じです。
在庫が多いと言われて一時的に発注量や生産量を減らしても、長続きできません。
倉庫にある長期停滞品を廃棄処分しても、しばらくするとまた倉庫には長期滞留品ができてしまいます。
われわれが生活習慣を変えるように、会社はものづくりのしくみを変えなければならないのです。
では、ものづくりのしくみを変えるためにまず何をするか?
ダイエットにしろ、しくみのカイゼンにしろ、最初は今の実態を直視して心の底からなんとかしなければならないという気になることが大事です。
わたしたちは、メタボになった、赤字になったということを数字で知ります。健康診断結果に記されている腹囲や体脂肪率や経理システムから出力される膨大な在庫金額や赤字金額です。数字を見たときは、このままでは駄目だと思いますが、時間とともに印象はうすれてしまい、なかなか行動につながりません。
病院に健康診断に行くとよく見かけるのが脂肪のかたまりの模型。
意外に容量があり、見た目はグロテスク。体重80kg、体脂肪率25%のわたしが抱えていた脂肪は20kg。
自分の脂肪そのものではありませんでしたが、こんな脂肪を20kgも抱えているんだとイメージしたときは、さすがにゾッとしてなんとかしなければいけないと思いました。
会社の在庫も同じです。数字を押さえることも大事ですが、現地で在庫そのものを見ることが大事です。在庫であれば倉庫に行けば現物を見ることができます。
まず、自社の在庫がどこにあるのか?から始まります。
倉庫に行けば、うず高く積まれた在庫に衝撃を受けるでしょう。コンピューター帳票の100個という在庫数と、目の前にある100個、もちろん後者の方がインパクトを受けるはずです。自社の工場で一生懸命つくった製品、銀行からなんとか融資してもらって仕入れた商品が売れずに積まれているからです。
それだけではありません。在庫の一つひとつをチェックしてみましょう。
同じ商品100個であっても一つひとつ違う顔が見えてきます。下の方に積まれているものは重さで箱がつぶれているかもしれません。上の方の箱には埃が積もっているかもしれません。そんなときはいつ作ったか、いつ仕入れたか商品に付いている伝票を見てみましょう。ひょっとすると数年前のものかもしれません。もしそうであれば会社の資金がこの倉庫で数年間眠っていたことになります。
このように会社のしくみがうまく機能していないことによって、発生した在庫の実態を現地現物で直接見ることです。数字で見た以上に、「このままではまずい」という気持ちがわいてくるはずです。
このとき、社長も自ら必ず現地に出向くこと。くれぐれも部下だけに任せて報告をさせるようなことはしないこと。トップ自ら実態を把握することが大事です。