第47話:現場カイゼンとIT
お客様や営業部門からの注文は、電子データで来るケースが当たり前になりつつあります。
また、必要な材料や部品を注文するときも、電子データでおこなうことが当たり前になってきています。
「うちはコンピューターなんか使わないぞ」と社長が言おうが、お客様や仕入先から電子データでの情報のやり取りが前提だと言われればそんな訳にはいきません。
また、どの工場も取扱い品目は年々増える一方、各々の製品がどんな部品からつくられるかといった構成情報はコンピューターで管理した方が、断然効率的です。
といった具合にいまや生産設備同様にコンピューターは工場の重要なインフラの一つです。
そんなコンピューターですが、工場のありとあらゆる課題は解決できるでしょうか?
「工場の最適な生産計画を立案することができるソフトウェアがあります。いかがですか」
なんて売り込みを受けた社長はいらっしゃるはずです。
ある社長から、「若井さん、このソフトウェアを導入してみようと思うんですが、どう思われますか?」
と聞かれたことがあります。そこで私は
「そんな魔法の杖のようなソフトウェアはありません。ソフトウェアを導入するだけで成果が出ると社長思っていますか?」
と聞き返しました。
1個当たりの作業時間、段取替えに掛かる時間、作業と設備の関連性などの、基礎情報を導入すれば、工場の最適な計画を立案する。
たしかに、机上の計算では与えられた条件下でよりよいものづくりの計画は立てることはできるかもしれません。
ただし、それはしっかりとした基礎情報が設定できること。
しかし、大半の工場はこの基礎情報自体が設定できません。
なぜなら、1個当たりの作業時間であれば、常に一定の作業時間で作業がなされているかというと、多くの工場の現場の作業時間は大きなバラツキがあるはずです。
早いときは30分で終る作業も長いときには3時間かかってしまう、なんてことはあるはずです。
じゃあ、平均を取って1時間45分を設定するかというと、そんな訳にはいきません。
そんなバラツキがある基礎情報で立てられた計画は、現場で使えるかといえば、使えるはずがありません。
じゃあ、なぜそんなにバラツキがあるのか?
それは、作業にありとあらゆるムダが入り込んでいるからです。
作業の中のムダは、いつも起こるムダもあれば、たまに起こるムダもあります。
ムダな時間はいつも一定ではなく、短かったり、長かったりとこれもバラツキがあります。
そんなデータで最適な計画が立てられるか・・・・
まず、無理ですね。
そんなコンピューターソフトを使いたい時は、まずは現場カイゼンで徹底して作業のなかのムダを取り除き、
いつ作っても一定の時間でできるような現場にカイゼンしないと無理です。
ITだけで成果を出せることは限定的であり、その前に現場カイゼンをやらないといけないこともあるのです。
社長、ITやコンピューターシステムに過大な期待は禁物ですよ。