第68話:カイゼンの前にやるべきこと
病気になったときの対応として、対症療法と原因療法があります。
対症療法は、表面的な症状の消失あるいは緩和を主目的とする治療法。
原因療法は、症状や疾患の原因を取り除く治療法。
対症療法は、風邪で高熱のときに解熱剤で熱を下げたり、歯が痛いときに鎮痛剤で痛みを押さえるような表面的なものです。
原因療法は、感染症のときに抗生物質で病原体を直接やっつけたり、がんに対する外科手術のようなものです。
対症療法であれば患者が訴える症状に対して直接手を打つのに対して、原因療法であれば患者が訴える症状の原因を把握してから手を打ちます。
これは、工場も同じです。
・品質が悪い
・在庫が過剰だ
これは表面的な症状です。
対症療法であれば、
・出荷前の検査を重点的におこうことで不良品が流出しないようにします
・整理をして要らないものを廃棄して在庫を減らします
一方、原因療法であれば
・品質に問題を起こしている工程のカイゼンをおこなう
・在庫が膨れあがらないように買い方や作り方を変える
病気であれば、レントゲンを撮る、血液検査をする、各種反応検査などで病気によっては比較的簡単に原因を特定することができます
工場も検査をして、「これが品質不良の原因だ」「これが過剰在庫の原因が」を容易に特定できればいいですが、そう簡単にいきません。
製品は工場のさまざまな工程を経てつくられます。特定の工程にだけに原因があるのではなく、複数の工程に原因が潜んでいるかもしれません。また、工場内の運搬途中になにか原因があるかもしれません。もしくは購入した材料に問題があるかもしれません。
過剰在庫の問題も、仕入先からの買い方、納品の仕方、工程での作り方、在庫管理の方法など、さまざまな原因が絡み合って起きています。
いったいなにが原因で品質不良を起こしているのか、なにが原因で過剰在庫を引き起こしているか?
患者が「腹部が痛い」と訴えるなら、それは打撲によるものか、病原菌によるものか、がんによるものか、はっきり把握しないと、誤った治療をしてしまいます。
そこで医者は、各種の検査をすると共に、患者の最近の体調や食生活、運動状況などを問診することで、患者を丸裸にするところから始まります。
工場であれば、その工場のものづくりが日々どのようにおこなわれているか、部品倉庫、加工工程、組立工程、構内物流といった工場を構成するさまざま要素がどのように機能しているか、まずは実態把握するところから始めるべきです。
ところが意外にもどの会社にも自社のものづくりがどうなっているか、全体を把握している人はいません!(断言できます)
そして問題を引き起こしている原因を究明して適切なカイゼンをしていくべきなのです。ところが
「そんなことより先ずは行動だ!」
と実態把握をして適切な策を打つなんて面倒だと、いきなり5Sだ、ムダどりだ、と闇雲にカイゼンを進めてしまっていることが多いのです。
これではいつまで経っても経営に効くカイゼン効果は出てきません。
社長の工場は、まず実態把握ができていますか?