第93話:自腹感覚で考える

「ワカイさん、うちの会社は毎年整理・整頓で大量に物を捨てているんです。こんなことじゃまずいと思いつついったい何をしたらいいのか・・・・」

 

カイゼンといったら、まずは整理・整頓。

 

要るものと要らないものを分けて、要らないものを捨てると職場のモノの量が何割か減ってスッキリします。

職場が今要るものだけになったら、次は要るものがすぐに取り出せるように置き場所を決めて、決められたところに置く。

 

しかし、これが意外に難しい。

 

なぜなら整理・整頓したはずの職場がしばらくするとまた要らないもので溢れかえってしまうからです。

 

その原因にはいろいろなことが考えられますが、その一つにまとめて大量に買えば安く買えるというのがあります。

まとめて大量に買えば業者への支払金額は増えますが、単価は安くなります。

会社の購買部門はいかに安い単価のものを仕入れるかで評価されますから、単価の安い物を一生懸命探します。

 

そうなると今月は10個しか必要なくても、100個買えば単価が安くなる業者が見つかれば、その業者から10ヶ月分買ってしまうのです。

 

果たしてこれは得したのでしょうか?

 

経営の神様と言われる京セラの創業者、稲盛和夫さんは著者「稲盛和夫実学」で次のように言っています。

 

「使う分だけを当座買いするから、高くかかったように見えるが、社員はあるものを大切につかうようになる。余分にないから、倉庫も要らない。倉庫が要らないから在庫管理も要らないし、在庫金利もかからない。これらのコストを通算すれば、その方がはるかに経済的である」

 

当座買いというのは、必要な分をその都度買うこと。

大切につかわないと失敗コストが増えます。

社内に置ききれなくなったものは外部に倉庫を借りなければなりません。

ものが増えれば管理する人も置かなければなりません。

在庫は銀行から借りたお金がモノに化けているのでそこには支払利息が発生しています。

使い切れないものは最後に廃棄処分でお金をドブに捨てるようなものです。

 

単価が安いからといって余分に買ったために余計なコストが発生しているはずです。

一度これらのコストを計算してみてください。

きっとビックリするでしょう。

 

これが自分のお金となるとこんなことはしません。

会社の事になると自腹感覚でおかしいと思うことを平気でやってしまうのです。

 

そこで単価が安いからといって大量に買うことに歯止めをかけないといけません。

 

社長の会社でも、いくら安くても1ヶ月分以上は買わないといったような社内基準を設けてみませんか?