第14話:2つのスピード

誰でも欲しいと思ったものは一日でも早く欲しいですね。

最近ではネットでの購入でも2、3日で届きます。

アマゾンだとアマゾンプライム会員になれば当日に届いてしまいます。

店頭に行って買おうにも「在庫切れで後日配送します」なんて言われるのもいやなので、わが家でもアマゾンで買う比率が増えています。

そうなると企業からすると一日も早く顧客に商品を届けるために「スピード」が問われます。

 

つまり、顧客から注文を受けて届けるまでのスピードを短くしようとします。

カタログ製品であればすべての製品を在庫で持ち、顧客に即納できるようにしようとします。

受注生産品であれば、注文を受けてからできる限り速く作って届けるようにしようとします。

 

しかし、この「スピード」を速くしようとすると、いろいろな問題が出てきます。

 

カタログ製品を在庫で持とうとしたとき、なにをどれだけ持ったらいいかは事前にはわかりません。

売れると思ったものが売れずに、売れないと思ったものが売れたため、かたや過剰在庫、もう一方は欠品となってしまいます。

 

受注生産品であれば、材料手配から、加工、組立・検査の工程があると数週間、数ヵ月の時間が掛かってしまいます。

そこでよくあるのが、営業の見込情報で計画を立てて材料を手配して生産指示を掛けておいて、実際の注文がきたところで先行手配していた計画に紐付けします。

しかし、数週間前から数ヵ月前の見込時点で計画・手配をするのでキャンセルになったり、計画変更が起きる可能性が高くなってしまいます。そのため、ムダな工数やロスが発生してしまいます。

 

お客様に商品を届けるスピードを速くしようにも、実際はなかなかうまくいっていないのではないでしょうか?

 

先ほどの工場などからお客様へ商品を届けるスピードを「外のスピード」とすると、もう一つ「内のスピード」があります。

「内のスピード」とは工場で材料や部品を投入してから製品として完成するまでのスピードです。

 

実はこの「内のスピード」を速くすることで、「外のスピード」を求めるときに出てくる、過剰在庫や欠品、ムダやロスを抑えることができるのです。

 

しかし、多くの工場では「内のスピード」求めるより、「効率」を求めます。なぜなら会社の各部門の評価は効率を問われるからです。

効率となると

生産物 ÷ 投入時間(工数)

となり、一定時間に最大のアウトプットが求められます。すると工場は出来る限り同じものをまとめて生産しようとします。材料や部品が投入されてすぐに完成しなくても、大量の生産物が一気にでてくれば計算上効率はアップするからです。

 

このように、多くの企業は工場から顧客への「外のスピード」を速くしようという意識は高いのですが、材料や部品の投入から完成までの「内のスピード」の意識が低いのが実態ではないでしょうか?

 

この「内のスピード」の重要性に気づいた企業は他社との競争に一歩前に出られるのです。