第9話:動きを見る前にものを見る
「あの作業者、なんかムダな動きが多いなぁ」
改善を始めると、こんな会話が聞こえてきます。
整理・整頓をやって、さて次は「ムダどり」と作業者をじっくり観察。
たしかに作業者を見るとムダな移動、ムダな手の動きが目立ちます。
そこでIE(インダストリアル・エンジニアリング)の手法を使って、作業者の作業分析、動作分析をやりたくなります。
わたしは大学が経営工学部だったので、得意の分野です。
今の時代はビデオも身近な存在なので、面倒な分析をしなくても作業者の動きをビデオで撮って分析すればお手軽です。
じゃあ、さっそくビデオを用意して、
「ちょっと待った」
そこに手を付けても、たぶん会社の経営には効きません。
作業者の動きや手の動きのムダをとるのも大事ですが、それより先に着目しなければならない大きなムダが現場にはゴロゴロしています。
一生懸命、動きのムダを取っても、大きなムダに飲み込まれてしまうからです。
一体、何に着目するか?
現場に積まれている「もの」です。
倉庫に積まれている製品が2、3日のうちにすべてお客様に出荷されればいいのですが
たぶん1週間しても1ヶ月してもその大半が残っていませんか?
なんでそんなことが起きたかと言えば、まとめてつくった方が効率的、まとめてつくってもいつか売れるだろうと判断したから
同様に倉庫に積まれている部品が1、2カ月ですべて使われればいいのですが
たぶん1年たってもその大半が残っていませんか?
なんでそんなことが起きたかと言えば、格安だということで海外メーカーから大量に購入したのはいいが、半分も使われずホコリをかぶってしまったから
これでは部品を買ったお金、つくるために人を雇ったお金が回収できません
大企業では、それで何百億円というロスを引き起こしているケースもよくあります。
これこそ大きなムダです
さらに、いやらしいのが倉庫や現場に積まれている、「もの」がさらに悪影響を引き起こすのです。
その話は次回に・・・・