第63話:在庫はどこで持ったらいいか

以前受けていたコンサルタントが

 

「在庫はできるだけ上流で持つように」

 

と言うので、扱っている製品をできる限り製品で在庫せずに、

材料や部品でしようとしたが、なかなかうまくいかないと

クライアントの社長が悩みを打ち明けました。

 

いったい何が起きていたのでしょうか?

 

 

製品に完成させて在庫を持つと、その製品の注文が来なければ出荷できません

 

しかし、途中のサブアッセンブリされた状態で在庫を持てば、

サブアッセンブリされたものを使う製品が複数あれば、

製品で在庫を持つより全体としての在庫が少なく済みます。

 

さらに上流の材料や部品で在庫を持てば、

その材料や部品を使う製品はさらに多くなるはずで、

さらに全体として持つ在庫が少なくなります。

 

また、加工をして、組み立てした状態で持つことは、

加工や組み立てに関わる人件費が発生してしまいます。

 

加工や組み立て前の状態で在庫を持てば

お客様の注文に応じて使うことができ

ムダなく材料や部品を使うことができます。

 

これらの理由で、某コンサルタントは「在庫はできるだけ上流で持つように」と言ったのでしょう。

 

たしかに、その通り。

 

コストを掛けてつくったものがすべて販売につながれば

なにも問題ないのですが、なかなかそうはいきません。

 

最終的に売れ残った在庫は値下げや廃棄となると

投入した人件費をドブに捨ててしまうことになります。

 

できる限り、上流で在庫を持つことで

 

工場全体の在庫は少なくなり

 

人件費や材料、部品をムダなく、有効に活用できるのです。

 

 

しかし、その反面次のような悩みが出ていたのです。

 

上流で在庫を持つためには、ものづくりのリードタイムを短くしたが、

お客さんの要求リードタイムを満足できるレベルまで到達できていない

 

お客さんの注文に応じてつくるために、注文のバラツキに工場の負荷が振られてしまい

工場の採算性が悪くなっている

 

在庫を上流で持つのが本当にいいことなのか、クライアントの社長は不安になられていました。

 

教科書的にはたしかに、在庫はできるだけ上流で持った方がいいでしょう

 

しかし、その工場のお客さんはどんなお客さんなのか、どんな注文が来るのか、どんな製品なのか、工場の作り方やものづくりの実力はどうなのか、などなど

 

置かれている状況によって、すべての製品の在庫を上流で持つべきなのか、一部だけなのか、場合によっては下流で持った方がいいのかは変わってきます。

 

コンサルタントのなかには、どこかの本で「在庫はできるだけ上流で持つように」と書かれていたいのを、そのまま言っているだけのあやしいコンサルタントもいます。

 

机上論だけのコンサルタントかどうか見極めつつも、自社に合った在庫の持ち方はどうあるべきか、言われるがままにやるだけでなく、自分たちで考える力も付けることが大事です。

 

社長の会社は大丈夫ですか?